Thoughts on the Market podcast

新たな強気相場の始まりか?

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9月5日金曜日発表の非農業部門雇用者数は、米国経済がローリング・リセッションからローリング・リカバリーに移行しているとの見方を裏付ける内容でした。では、米国株は今後どうなるのか。弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジスト、マイク・ウィルソンが見通しをお話しします。

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トランスクリプト


「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。

本日は、先日発表された雇用統計と、米国株にとってのその意味について、弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンがお話しします。

このエピソードは9月8日 にニューヨークにて収録されたものです。

英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。

大いに注目されていた9月5日金曜日発表の非農業部門雇用者数は、労働市場は弱いという弊社の見立てを裏付ける内容でした。しかし、弊社は何ヵ月も前からこのことを論じており、株式市場にとっては言わば古いニュースです。第1に、ひょっとしたら雇用統計は最も後ろ向きな、つまり過去に目を向けている経済指標かもしれません。第2に、この統計は大幅に改定されることが特に多く、リアルタイムでは最新のデータが当てにならない傾向があります。全米経済研究所(NBER)が景気後退の始まりを宣言するころには、ほとんどの人が景気後退期にあることを意識しなくなっているのが普通であるのはそのためです。

また過去の実績からは、非農業部門雇用者数の改定がプロシクリカルであることがうかがえます。景気後退に向かっている局面では下方修正の幅が大きくなりがちで、景気回復が始まれば上方修正の幅が大きくなりがちだという意味です。今回もこのパターンに沿っているように見えます。実際、金曜日の改定は前月のそれより大幅に良い内容であり、労働市場が第2四半期に「底を打った」ことを示唆しています。

このことは、私が何年も前からお話ししている、景気と市場に対する弊社の基本的な説を裏書きしてくれます。 具体的に言えば、米国では2022年に「ローリング・リセッション」が始まり、今年4月の「解放の日」に相互関税が発表されたことをもってようやく底を打ったと私は考えています。このローリング・リセッションの初期段階は、新型コロナによるハイテク製品や消費財の需要前倒しの反動が主導する形で進みましたが、やがて他のセクターもそれぞれ異なるタイミングで不況に突入していきました。

従来型のリセッションの判定に用いられる指標で典型的な変化が観察されなかったのに、今になってそれらの改定値で変化がより明確になっているのは、それが主な理由です。新型コロナ後に移民の流入が歴史的な大幅増になったことと、今年になってその取り締まりが行われていることも、労働市場の多くの指標をさらにゆがめることになりました。弊社はここ数年、こうした話題を広く取り上げてきましたが、金曜日に発表された弱い雇用統計は、米国経済がローリング・リセッションから「ローリング・リカバリー」に移行しつつあるという弊社の説を裏付ける証拠だと言えます。つまり、景気は新たな循環に入りつつあり、4月に始まった新しい強気相場が今後どこまで続くかについてはFRBの利下げがカギを握ることになるでしょう。

弊社の見解で何よりも重要なのは、過去3年間の景気は多くの企業や消費者にとって、GDPや雇用のような総合的な経済統計が示唆するものよりはるかに弱かったということです。景気の強さを測る際には、消費者や企業の景況感調査に加え、企業の利益成長とその広がり方に着目する方がよいと弊社ではみています。ひょっとしたら、景気の良し悪しを判断する最もシンプルな方法は、今の景気は幅広い層に繁栄をもたらしているのかと問うことかもしれません。この物差しに照らして言うなら、答えは「ノー」だと弊社では考えます。ここ3年間はほとんどの企業で利益がマイナス成長になっているからです。ただ、良い知らせがあります。過去2四半期では、この利益成長がようやくプラスに転じているのです。そして同時に、ここ数ヵ月間弊社が強調してきたように、企業の業績見通しのV字回復も広がりを見せています。このことも、ローリング・リセッションが最悪期を脱したこと、おそらく「谷」は4月だったことを裏付けていると思われます。株式市場はいつものようにこれを正確に把握し、底を打ったのです。

さて、これから本物の利下げサイクルが始まる公算が大きく、この新たな強気相場が続くためにはそのような利下げが必要だと弊社ではみています。ただ、FRBは遅行指標である労働市場のデータの弱さよりもインフレの方をまだ重視している可能性があり、利下げは株式投資家の願望よりも緩やかなペースで進むことになるかもしれません。また、企業と財務省の両方が資金調達を増やすために流動性資金が少し干上がるかもしれない兆しもあることから、株価が軟調になりやすい季節に相場が一服したり、さらに進んで調整したりしても、私は驚かないでしょう。もしそうなったら、弊社なら押し目買いに入るでしょうし、FRBがさらにハト派的になることや財務省と連携することも見込んで、クオリティで劣る銘柄にも物色の幅を広げることすら検討するかもしれません。結論を申し上げれば、2022年に始まったローリング・リセッションの底打ちをもって、株式市場では新しい強気相場が始まりました。この相場はまだ初期段階にあり、株価の下落には押し目買いで臨むべきです。

最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

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